<問題の顕在化>何をレベルアップする?
前章のおさらいです(前章から続けて読んでいただいているかたはこの段落を飛ばしてください)。前章では、日本語能力が高く、すでに日本企業での勤務経験があるSさん(中国)が、所属企業から「レベルアップしてきてください」と命じられ、弊社の海プロ受講に来られました。この章では、とにかく「レベルアップしたい」Sさんのその後をお伝えします。
テストの結果、Sさんはほかのクラスメート4名とともに研修をスタート!毎日の授業にまじめに取り組まれるSさんですが、研修担当のスタッフには一つ気になることが・・・・。研修を始めて○日目のこと。Sさんが神妙な面持ちで相談にいらっしゃいました。「クラスを変更して欲しい。」なるほど、研修が始まってからSさんの表情がどことなく暗かったのはこれが理由でした。とにかくご本人の気持ちを聞き出します。「自分が知っていることを知らない人が同じクラスにいる。この人たちと同じクラスでは自分がレベルアップできない。これでは、会社からの期待に応えられない!もっと上のレベルの人だけのクラスにして欲しい!」とSさんは涙ながらに訴えます。とにかく一途に「レベルアップしたい」Sさんは、ここではそれが期待できない。会社の人に申し訳ない!と必死だったのです。
通常、研修生ご本人の要望や都合でクラスを変更することはありません。Sさんには、あらためてこの研修の目的や今すべきことについてお話ししました。それでも一向にSさんの表情は明るくなりません。それどころか、「このままではいよいよ国に帰ってしまうのでは?」と周囲が心配するほどの落胆ぶり。そのため、Sさんにとって最善の選択とはどうすることだろう?とあらゆる対応策を考えました。
ここで本章の冒頭<問題の明確化>何をレベルアップする?に戻ります。
Sさんは日本語の知識があり、日常会話には困らないレベルです。ここに大きなヒントが隠されています。みなさんの身近な海外スタッフにこのような悩みやトラブルはありませんか。海外スタッフの多くは、本当に日本語が理解できないから困っていますか。Sさんがどうして会社から「レベルアップしてきてください」と命じられ、海プロを受講することになったのか。日本語が堪能なSさんの様子を見てみると、日本語が上手に話せるからといって、日本での仕事がスムーズにいくわけではない。ということが少しずつ見えてきましたね。
次章では、どのようにしてSさんはこのような事態を乗り越えたか、についてお伝えしたいと思います。
次章は5月12日公開予定です。お楽しみに!