(2)海外における日本語教育の実情

現地日本語教育スタッフとは?

 

前回第1話では、なぜある一定の資格をとるほどの海外人材の方が、実際に日本人と協働する職場で上手く意思疎通が取れないのか、という疑問を呈しました。第2話では、現地の日本語教育を担う現場から見えてきた実情に迫り、海外の日本語教育の現場では何が起きているのか、について見ていきたいと思います。

 

さて、今回私たちはベトナムにある日本語教育機関にお伺いし、「現地日本語インストラクター研修」と称して、現地で日本語を教えているベトナム人講師のスキルアップのための研修を行ってまいりました。

まず実際に行ってみてわかったことは、みなさま日本語を習ってきた延長で日本語を教えている、ということです。つまり、現在日本語講師をしている人は、ベトナム人の中で「日本語が上手な人」であり、教え方を学んだ人ではないのです。

このことから、日本語の教え方や知識、技術を知って身につけていただくことができれば、現状はかなり改善されるのではないかと思われました。

 

そこでまずみなさまにいつも通りの授業を行っていただき、その後、弊社、講師育成インストラクターによる授業《 通常日本で行われている授業 》を見ていただきました。みなさま普段の授業では、まず文法の説明、そして大きな声でリピート練習をしているそうです。ご自分が習ってきたように「教科書通り」を繰り返すというものでした。この感じ、何か覚えがありませんか。そうです。少し前まで日本でも同様のスタイルで英語の授業を受けていましたよね。ところが弊社インストラクターの行う授業では、「どんな場面で使うのか」に焦点があたっていました。即座に場面を想像させる、そのあまりにリアルな演技に、みなさまショックを隠しきれない様子でした。これまでの授業スタイルにはなかった発想で、まさに目から鱗だったようです。

授業をする上で大切なことは、本当にその日本語を使いたい!と生徒のみなさんが思ってくれるような授業にすることです。文法や形が大切なのではなく、どんなとき、どんな気持ちのとき、どんな人がどんなときにという「リアルな感情」を引き出すこと。そうすることで教室の外に出て、同じ状況に置かれたとき、初めて本物の日本語が使えるのです。

そのことに気付いていただけたことが、本研修の目的であり第一歩でした。

 

現在は本インストラクター研修で得た知識や技術を使って、みなさま新しい授業に取り組んでいらっしゃいます。次回第3話では、「気づき」を得て、改善を試みている現地に再び飛んで、レポートをお送りする予定です。お楽しみに。

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